フーデリ稼働中に通りがかりの月極駐車場で見かけた風景。
緑色のフォルクスワーゲン・ビートル。
当方マニアでは無いので細かい型番等は分からないが、この形とこの色に突如強烈なノスタルジーワールドに引き込まれた。
というのは子供の頃、初めて買ってもらったラジオコントロールカーがまさにこの色でこの型のビートルだったのだ。
マジョリティ的感性だったらレースカーかラリーカーの様な無難なモデルを買ってくると思うが私の父は幾分捻くれているのか、買ってくるオモチャはどれも単純に子供ウケする「ド」ストレートなモノは少なかった様に思う。
しかもこのモデル、「3チャンネル」と自慢げに謳っていたが、要は「前進・右折・左折」出来ますよ!という、今だったら「…バック出来ないの⁉︎」とワガママ坊やがギャン泣きしそうなスペックだったのだ。
実際当時は有線リモコンでツーボタン、前進と左折のみ、みたいな感じのものもまだ多く、「右折はどうするんだろう⁉︎」と子供心に不思議に思ったものだが、ご安心ください、左折を続けているとあら不思議!いつの間にかスタート地点より右側に来ているじゃぁあーりませんか!
…というロジックが許されている時代だったのだ。
買ってもらった当初しばらくはもちろん遊びまくったものだが、直ぐに大して遊ばなくなった。
単に飽きた、というだけではなく…
一戸建てとは言え決して豪邸とは言えないわが実家では大人の靴大の車が縦横無尽に走り回れるほどのスペースは無く、また実車のようなデリケートなハンドル操作ができるわけでもないのですぐに何かにあたって動けなくなってしまうのだった。そう、何せバックできないのでその都度本体に駆け寄って手動で復帰させなければならないということが飽きっぽい子供の興味を著しく削ぐ、というのは想像に難くないだろう。
そして当時はまだ充電池など一般的で無く、コントローラーには角型の9V電池が必要だったし、本体の方も単一だったか単二だったかの大型の電池が数本必要だったのでそれなりにランニングコストがかかったからだったのだ。
ところでこのラジコン(「ラジコン」増田屋の登録商標だが、件のビートルはまさに増田屋のだった)には凄いところがあって、実車のビートルって「ぽんぽんぽんぽんぽん」とタイコを叩いているような独特のエンジン音なのだけど、それをいい感じに再現出来ているのであった。
そしてこのラジコンには致命的と言えるようなネガティブな特徴もあり、それは右左折時の速度が極端に落ちる、ということなのだった。電池容量が少なくなってくるとそれは顕著となり、とても看過できるレベルではなかった。
なぜだろう?ということで分析開始…というか分解開始。
本体底面にあるネジで外せそうなものは外してあの特徴的な丸みのあるボディとシャーシを分離(実際にはリアガラス部に受信状態を示す赤色LEDがコードで繋がっているので完全に分離はできない)。
すると糸車大の筒の開口部に黒いゴムシートを被せたナゾの部品を発見。
走行状態にしてみると動力の一部を利用して金属の爪を弾いてそれが黒いゴムシートを叩いていた。
謎のパーツは太鼓で、あの独特のサウンドを小さな太鼓で再現していたのだった!
...それはいいんだけど、ひょっとしてこれが抵抗になって速度が落ちているんじゃないの?
ということで太鼓を撤去した状態でテスト走行してみたら...
静かになっただけで「走り」に関しては大して変わりませんでした。
では速度低下の原因はいったい何だろう?
ふと気になり本体を持ち上げた状態でハンドル操作をしてみたら…
舵が切られない⁉
じゃあどうやって曲がってるの???
色々と実験してみてようやく解明。
例えばコントローラーのハンドルを右にひねると(車のハンドル型のハンドルなのです)電磁石で右前輪にブレーキがかかりその結果右方向に曲がってしまうという、走行という側面だけから見れば恐ろしく非効率なシステムだったのです。
月日は経ち、その後お小遣いで前後左右に進むことのできるバギーのような形のラジオコントロールカーを購入したこともあり、件のビートルは完全にお払い箱となったわけですが...
今回たまたまその実車を見かけたことで幼い頃の思い出が蘇ったのでした。
ちなみに冒頭の写真ですが、マツダの広告で車をカッコよく撮影するコツを紹介していて、「中心からずらして躍動感を出す」的なことが書いてあったような気がしたのでそのつもりの画角なのですが...どうですかね?