とある稼働にて。
N駅のガストからのウーバーリクエストをキャッチ!
到着して「オレの場所」に駐めようとしたら先客が万来していた。
「オレの場所」の前後も前々も後々もびっしり駐まっている。
この日はかなりの強風だったので何かしらの壁際に駐輪するのがベター、というかマストで
「オレの場所」は壁際なので期待していたのだが致し方なし。
もちろんもっと発想を柔軟にすれば先客を排除するという選択肢も存在するのだろうが運悪く先客が戻ってきてトラブルになったら返ってコストが増えるのは自明なのでおとなしく少し壁からはみ出すスペースに駐輪。
さらに「スタンドの足」と呼んでいるオリジナルの追加パーツを設置してまさかの転倒に備えた。
ふと振り返ると来る途中に見かけた老婆か横断歩道の手前でフリーズしていた。
その老婆は歩行機能がかなり衰えているご様子で
とりあえずゴルゴ松本が「命!」ってやってるポーズを想像してほしい。
でもちろん片足立ちなどはしていなくてガニ股気味ですり足に近い感じ。
で右手に買い物カート、左手に杖を装備している。
老婆は横断歩道に差し掛かり数台の車が通過したのちN駅バスターミナルを出発したばかりと思われる路線バスが横断歩道の左側から接近していたが停止線で停車。
状況的には「渡ってください、どうぞ」といった感じか。
しかし老婆は渡ろうとしない。
ストリートには時おり横断歩道の手前で道路に向かって立って送迎の車待ちをしたり、用もなくスマホいじりなどしつつ突っ立っているピープルがいたりして
自動車目線だと「渡るのか、渡らないのか、どっちなんだい⁉」という状況があって筆者も苦々しい思いをしたことが多々あったりするが、
今回の老婆は私の見る限り明らかに「渡りたい!」という意思が感じられた。
そしてバスは停車している。反対車線からも接近する交通は無い。
いつ渡る?今でしょ⁉
しかし老婆は横断を開始しない。
???
時おり頭ごときょろきょろと視線を泳がせて迷っているご様子。
老婆としては行き交う交通が完全に途絶えてから自分のペースで渡りたかったのかもしれない。
仮に自分の歩行速度が1km/h程度だったとして、車を待たせている状況で横断歩道を渡切る間、ず~っとプレッシャー(被害妄想かもしれないが)を感じ続けているというのも相当にキツいというのは想像に難くない。
若い人(その老人と比較して)でも車に譲られる形で横断歩道を渡るとき必要もないのに小走りになったりしてしまうのではないか(その状況で小走らない勇気を私は欲しい)。
しかし状況的に見てここでバスが動いたら点数稼ぎの警官(←都市伝説?)の餌食になる可能性は否定できないし(まして何気に交番前だったりする)、
ましてこのご時世、動画を盗撮されて「横断しようとしている老婆を無視してアクセルを踏み込むバス運転手おったwww」というキャプションとともにX(旧Twitter)に投稿→拡散→炎上、というシナリオもあながち冗談にはならないかもしれない。
バス運転手の立場からしたら待つしかない、という状況か。
そんな様子を1~2mぐらい離れたところで駐輪動作をしながら観察していたのだが
あるシーンが頭をよぎった。
ショート動画だったかなんだかで、道路を横断しようとしている老人の手前で停車したライダーがバイクを降りて他の交通を制しつつ老人に付き添って道路を横断するっていうヤツ。
そんなものはフィクションやファンタジーの世界の話だと漠然と思っていたが、実世界でこんな場面に出くわすとは!
しかしそのような行動は見る人が見たらスタンドプレイ以外の何物でもないし、まして豆腐メンタルの私にそんなことができるのか⁉
ひょっとして空耳だったのかもしれないが老婆の「ど、どうすれば…⁉」という嘆きが聞こえたような気がする...いや、聞こえた。
行くしか⁉
「渡られますか?ご一緒しますよ〜」
とバスを背にして進行方向に手を差し出すと「すみませんね〜」的なセリフを口にしつつようやく老婆は歩行を開始した。
推定時速1km/h…
キツい。
ただでさえ気の乗らないスタンドプレイ…
「このエエカッコシイがあ!」
脳内の被害妄想AIが生成した罵声が脳内をぐるぐると駆け巡る(脳内のAIって…???)
何気にもっとも気になっていたのはバスのダイヤのことだったしする。
ただでさえ時間が押してる(推定)ところにこのハプニング(こらこら)…何分取り戻せばいいのやら…も、無理…というバス運転手の嘆きが聞こえたような気がする(おそらく幻聴)。
時折「ゆっくりで大丈夫ですよ!」「風が強いので気を付けてくださいね!」
などと声かけしたが、
そういった「本当は思ってもいないセリフ」が意外とスラスラと口に出る自分に驚愕…というか呆れてしまったりした。
時速1km/h(推定)で並走…いや、「並歩」か?…しながら脳内では
「ワンチャン老婆が実は大富豪で『あの親切な若者(オジサンだけど)に遺産を…』とかあったりして…クックッ」としょうもない妄想にセルフ嘲笑を送ったりしていたが「そこの東急ストアで買い物しようかと思って」という老婆のセリフでその妄想は雲散霧消した。
大富豪は東急ストアでは買い物をしない!
何とかゴール(道の反対側)到着。
「ではお気をつけて~」と心にもないセリフを残し戻ろうと思ったがここは横断歩道の反対端。私はこちら側には用は無いのだ。
チラリとバスの方を見やると絶賛停止中。私が戻らないことには発車がオーライできないのだ。「待たせたな」といった感じに軽~く手を上げて老婆と「並歩」していた時の20倍ぐらいの速度で横断歩道を反対側に渡って事態は収束したのだった。